脳と発達
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Congenital ocular motor apraxia の2症例
平山 義人岡田 良甫植村 恭夫森実 秀子
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キーワード: 横にらみ症候群
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1974 年 6 巻 3 号 p. 212-223

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抄録

1952年D.G. Coganにより, congenital ocular motor apraxia (以下C. O. M. A.と略) と命名された疾患の2症例を報告し, 若干の考察を加えた.
1) 症例1にはO. M. A. 以外の随伴症状を認めなかつたが, 症例2にはdevelopmental anomalyと思われる脳性麻痺, 先天性眼瞼下垂, 高口蓋, 膀ヘルニアの合併をみた.神経学的検査で2症例ともに器質的脳病変を認めたが, 部位は一致しなかつた.
2) 世界文献の展望から見出された本症34例図と自験2例の計36例から, その症状を以下のように要約することができた.
i) 眼球運動
a) 随意水平眼球運動は不能. b) 随意垂直眼球運動は正常にみられる. c) 無意図な自然の状態での眼球運動 (random eye movement) は各方向になされる. d) 水平追従運動は不能なものから正常なものまで一定しない. e) 視運動眼振は, 第1相の消失, 第2相の出現例が多い. f) 検者を中心軸とした, 体の円運動がなされると, 体の回転方向とは逆への眼球運動が起こり, 回転が続けられている間は極度のむき眼位を保つ.
ii) 側方視するためには, 頭の回転運動が必要で, この頭の運動を主訴に来院する症例が多いことは注目される.
3) 側方視に際してみられた頭と眼球の動きを分析し, 同運動を詳述した.
4) 合併症としては, 運動発達遅延, 身体奇形, 眼科学的異常を伴う症例が多かつた.
5) 本症の予後は良好な場合が多いが, 他方改善されない場合もあり, その場合は読書障害その他のminimal cerebral dysfunction syndromeがみられる.改善例には自然治癒もあるが, 更に積極的薬物療法により数カ月の経過で著効を得た例も少なくない.
6) 本症はvestibulo-cortical relationshipを破る病巣の存在, または発達異常に基づく髄鞘形成遅延のために出現すると考えられる.少数ながら遺伝性が考えられる症例も認められる.
7) 小児期のうちにC. O. M. A. が消退する, 関連神経路の髄鞘化遅延のために出現していると考えられる例に対しては, O. M. A. ininfancy或はdevelopmental O. M. A. と呼称することを提案した.
8) 鑑別上, 眼球運動障害を示す眼科的疾患とともに, チックや向反性てんかん発作などの神経学的, 或は神経症的疾患の存在を否定することが必要である.

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© 日本小児小児神経学会
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