抄録
1) 眼球運動のシステムを水平, 垂直, 回旋およひvergenceの4つのシステムにわけ, その臨床的な意義について検討を加えた.
2) 水平眼球運動のうちでも眼振急速相や自発眼球運動など「速い眼球運動」にたいしては, 脳橋部労正中帯 (PPRF) が重要な役割をはたすことを示し, 橋部脳幹障害では垂直眼球運動に比して水平眼球運動が著明な障害をうけ, これは中脳障害では垂直眼球運動がより障害されることと対比される.
3) 橋部脳幹障害における注視麻痺, 内側縦束症候, 注視眼振, いわゆるocular bobbingの現象とその診断的意義について述べた.
4) 中脳障害時には上方注視麻痺, 前視蓋症候群, いわゆる閃光様眼球運動などの診断的意義についてのべたが, これら異常眼球運動にたいする前視蓋, 後交連の重要性を強調した.
5) 小脳障害における眼球運動の異常は, 眼振としてではなく失調性眼球運動としてとらえられるべきことを示し, また, 末梢迷路性眼振, 延髄障害時にみられる眼振, さらに, いわゆる先天性眼振の特徴についてのべた.