脳と発達
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神経学的立場からみた小児の言語発達障害
鈴木 昌樹
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1976 年 8 巻 1 号 p. 5-15

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抄録

言語発達遅滞の中で,微細脳障害によると思われるものが少なくないことは,筆者の従来までの研究で示唆された事実であるが,この脳障害がどのような機序で言語発達を障害するのか,大脳機能障害ことに象徴機能の障害という観点から検討を加えた.このような言語発達遅滞は,言語の理解はよいが表出のできない,いわゆる発達性運動失語と,言語の理解もできない発達性語聾(先天性語聾)に大別されている.この中,比較的稀であるが重篤な発達性語聾は感覚性失語というより,むしろ低位の聴覚失認に属すると考えられること,これに対し,いわゆる発達性運動失語にはいろいろな機序が考えられるが,基本的には受容面の障害で,しかも象徴機能の中では低位の結合レベル,すなわち音素から語や文章を形成する機能の障害が主役を演じているものが多いことを指摘した.さらに自閉的な小児における言語発達遅滞について論及し,従来自閉症といわれているものに脳障害の考えられるものが少なくないこと,さらにその中に象徴機能の中では高位の障害である選択レベル,すなわちとり入れられた言語を概念に変える機能の障害が関与しているもののありうることをのべた.ついで精神薄弱における言語発達遅滞について,このような象徴機能からのアプローチが今後の課題であることを論じた.最後に,言語発達遅滞における小児神経学の役割を論じ,あわせて予後の判定,行動に対する薬物療法の意義についても言及した.

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© 日本小児小児神経学会
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