抄録
本稿では、従来「四天王寺系」の瓦工により生産されたと考えられてきた阿波地域の瓦のうち、代表的な資料と位置付けられる勝瑞城館跡の出土瓦を分析した。その結果、勝瑞城跡出土の軒平瓦は、14世紀から15世紀初めに比定される群と、16世紀後半に比定される群の2 群から構成されることが明らかになった。さらに、16世紀に比定される群と同笵・同文関係を有する瓦は阿波・淡路の諸遺跡から出土していることが明らかになった。摂津・河内と阿波・淡路の両地域のなかで同笵・同文瓦がまとまる傾向があり、両地域における造瓦活動は、技術導入の可能性は否定できないものの、基本的に別々に展開したと考えた。