日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
心血管系モデルとその調節
大久保 淳子浦山 昌生會澤 重勝太田 裕治會川 義寛
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2010 年 73 巻 2 号 p. 109-121

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抄録

 心血管系は心臓と血管から構成される。心臓は静脈から流入した血液を動脈に送り出すポンプとして機能する。血管は血液量を制御する機能と、血流を制御する機能を持ち、前者は血管コンプライアンスで、後者は血管抵抗で表わされる。そこで、この両機能を分離して、前者を動脈と静脈に、後者を末梢血管に対応させた。
 以上より、心抵抗 Rh、動脈 Ca、静脈 Cb、末梢血管 Rs からなる心血管系モデルを構築した。このモデルにおいて、動静脈圧差 Δpと最大動静脈圧差ΔpMとの比:循環率θ≡Δp ⁄ ΔpM、および心拍数 ƒ と心筋の拡張期末コンプライアンス Ch0 の積の逆数:心抵抗 Rh=1 ⁄ ƒCh0(圧/流量の次元を有する)を定義した。この結果、循環率θは運動とは関係なくθ=1 ⁄ 2であることを示した。この調節はRhRsを一定とすることによりなされ、かつその比は動脈コンプライアンス分率 ka に等しい。
 さらに、θ=1 ⁄ 2のときのコンプライアンスと抵抗の関係kaRhRsを用い、循環血流量が負荷血液量Vと心抵抗 Rh の比 VRh、負荷血液量Vと血管抵抗 Rs、の比 VRs に比例することを示した。生体が運動時に循環血流量を増加させる際には、負荷血液量を増加させるとともに、心拍数の増加による心抵抗の減少、および血管抵抗の減少により心抵抗血管抵抗比を一定に保つ。すなわち、VRhVRsは増加し、生体は θ を1 ⁄ 2に保ちながら循環血流量を増加させている。

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© 2010 日本温泉気候物理医学会
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