日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
質問紙調査に基づく、妊婦の入浴習慣と妊娠経過への影響
中山 毅
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2014 年 77 巻 3 号 p. 250-256

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抄録

  入浴習慣は国や文化により大きく異なるが、一方で時代による変遷もあり、近年ではシャワー浴が普及する等の変化が現れている。そこで、現代の妊婦の入浴習慣について調査すると同時に、妊娠経過に及ぼす影響につき検討した。
  2011年4月1日より2012年2月29日までに当院で出産をし、1ヶ月健診をおこなった褥婦204名を対象とし、無記名アンケートを実施した。アンケートは、入浴習慣、温泉浴に関する多肢選択法および自由記入法からなる。これらの結果と、妊娠経過中に起こったイベントにつき、後方視的に関連性を検討した。
  204名の妊婦の内訳は、初産婦が99名、1経産が76名、2経産以上が29名であった。産科合併症としては、切迫流産が12名、切迫早産が35名、早産が15例、妊娠高血圧症候群が7名、微弱陣痛が10名、前期破水が26名に認めた。一方で妊娠中の入浴習慣については、全例毎日入浴習慣があったが、内訳として、毎日シャワー浴を行う妊婦(シャワー浴群)が38名(19%)、週に1~3回の湯浴が45名(22%)、週4日以上の湯浴を行う妊婦(湯浴群)が121名(59%)であった。産科合併症を比較したところ、湯浴群において、妊娠高血圧症候群の頻度が高く、一方で微弱陣痛に関しては、シャワー浴群の方が多い傾向にあった。
  さらに、入浴習慣が外陰部の保清に影響するか、また細菌性腟症の原因や助長因子となるかについては、科学的根拠が乏しいが、本検討より湯浴を日常とする生活習慣が、腟内細菌叢やpHに影響を及ぼす可能性が示唆された。

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© 2014 日本温泉気候物理医学会
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