糖尿病に対する温泉療法の動脈硬化改善効果を検討した。更に、非糖尿病患者と温泉療法未施行糖尿病患者についても調査し、比較検討した。
方法:対象は、(1)当院入院中の糖尿病患者104名、(2)当院入院中の非糖尿病患者60名、(3)他施設の温泉療法未施行の糖尿病患者28名。足関節上腕血圧比検査(ABI)を、入院時と退院時に施行した。
結果:対象(1)糖尿病患者のABIは、右1.10±0.01→1.12±0.01へ有意に改善(p<0.01)。左も1.06±0.02→1.09±0.01へ有意に改善した(p<0.01)。しかし、対象(2)非糖尿病患者では、ABI右1.09±0.01→1.07±0.02、左1.08±0.01→1.06±0.02と変化が無かった。対象(3)温泉療法未施行糖尿病患者では、ABI右1.07±0.03→1.05±0.03、左1.05±0.03→1.06±0.03と、対象(2)と同様に変化が無かった。
展開:対象(1)に対して、動脈硬化マーカー:Total PAI-1と高感度CRP、酸化ストレスマーカー:TNF-α、善玉アディポサイトカイン:アディポネクチンを、温泉療法の前後で測定した。Total PAI-1は低下傾向、高感度CRPとTNF-αは有意に低下、アディポネクチンは有意に上昇した。温泉療法による抗動脈硬化作用、抗炎症作用、血管内皮機能改善作用が示唆された。
考察:本結果は、非糖尿病患者や温泉療法未施行糖尿病患者では得られなかった変化であり、より動脈硬化の強い糖尿病病変に対して、温泉療法が有益である可能性が示唆された。
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