2015 年 78 巻 2 号 p. 118-129
一般にサウナは健康に良いとされ、腰痛や肩こりのみならず、慢性心不全など従来禁忌とされてきた疾患にも適応されるようになってきた。一方、腎不全に対するサウナの影響を検討した論文は1970年代以降みられない。本研究では、5/6腎摘除(Nx)マウスに対する低温サウナの安全性、および腎組織での内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を確認し、サウナによる腎保護作用について検討する。
我々は、マウス(C57BL/6)を用いて5/6腎摘除モデルを作成し、サウナ治療群、非治療群に分け、同様に偽手術を施したマウスをサウナ治療群と非治療群に分け、4群(各n=5)で実験を行った。低温サウナ治療には電熱式自然対流温熱装置を用い、41°C、15分間の加温、その後32°C、20分間の保温を12週間連日実施した。
Nxモデル完成時の血清クレアチニンは偽手術群に比して有意な上昇を示した。12週間のサウナ治療後、サウナ治療群と非治療群でクレアチニンクリアランスに低下傾向がみられたが、統計学的有意差は認められなかった。また、体重、水分摂取量、24時間尿量、血清ナトリウムなどの電解質にも有意差はなく、今回のサウナ設定において明らかな有害事象はなかった。収縮期血圧、尿タンパクいずれも有意差は認められず、期待した尿タンパク減少効果は確認できなかった。しかし、eNOS mRNAの発現量は、サウナ治療群で有意な増加が認められた(p<0.05、Nx治療群 vs. Nx非治療群)。 腎でのeNOS mRNAの発現増は輸出入細動脈の温熱性拡張による糸球体にかかる圧ストレス軽減が期待でき、糸球体硬化を生じやすい種では尿タンパク減少が期待できるかもしれない。