日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
足浴時の自律神経機能の変化と加齢の影響
美和 千尋島崎 博也出口 晃鈴村 恵理川村 陽一前田 一範森 康則
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2015 年 78 巻 2 号 p. 130-137

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抄録

  足浴は足部を湯に浸す部分浴の一つである。その効果は暖められた足の部分の血液循環を良くし、疲労、浮腫、冷え性、睡眠に効果がある。この論文では、足浴時の自律神経の変化とその変化に加齢がどのように影響するのかを検討することである。高齢者9名(男性4名・女性5名、平均年齢73.5±8.4歳)、若年者8名(男性8名、平均年齢25.5±3.4歳)の被験者を対象とし、座位にて安静10分間、下腿部を湯温41.2±0.6°Cの湯につけた足浴20分間、足浴の終了後5分間安静を行った。測定項目は鼓膜温、皮膚血流量、血圧と心拍数とした。鼓膜温についてはサーミスターにより外耳道の皮膚温を、皮膚血流量として左側の大腿部(非浸水部)と下腿部(浸水部)をレーザードップラー血流計で、血圧(収縮期・拡張期血圧)と心拍数は自動血圧計で測定した。足浴時の鼓膜温は、若年者では高齢者に比べ、有意に上昇し、皮膚血流量は、両被験者とも下腿部において有意に増加し、若年者は高齢者に比べて有意に大きかった。大腿部の皮膚血流量は若年者のみ有意に増加した。血圧は、若年者では変化しなかったが、高齢者では下降した。心拍数は、若年者では有意な増加が示されたが、高齢者では有意な変化は認められなかった。これらの自律神経機能の変化は、加齢による、脂肪量の増加、筋肉量の低下、血管の柔軟性の低下、受容器の感受性の減弱などが関わっていると思われる。

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© 2015 日本温泉気候物理医学会
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