日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
温泉地ツアーによるストレス解消と血清コルチゾール値について
前田 豊樹牧野 直樹堀内 孝彦
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2019 年 82 巻 2 号 p. 70-77

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抄録

  温泉入浴は身体をリラックスさせる効果があり,ストレスを低減して健康増進効果があるとされる.超高齢社会を抱える日本において,高齢者向けの温泉観光をはかることは,高齢者の健康増進をも進めることができると期待できる.別府市は世界一の源泉数を擁する温泉観光都市である.以上を背景に,別府市は高齢者向けに温泉入浴を盛り込んだ健康増進ツアーを企画した.そして九州大学別府病院,別府市医師会,別府市の協力で,この企画のストレス低減効果を検証した.健康増進ツアーは4泊5日で,温泉入浴の他,別府市の古い町並みを楽しむ散歩,ヨガ,野山でのハイキング,神社仏閣参拝といった心と体の癒しをもたらしてくれると期待されるスケジュールが組まれている.ツアー参加者は60歳以上の男女合わせて20人で,ストレスに関する問診,血圧測定,唾液検査(唾液アミラーゼ),血液検査(CRP,コルチゾール)を受けてもらい,ツアーの開始時と終了時に比較し,t-testで有意差検定を行った.問診のストレススコアの平均値は,ツアー前後値はそれぞれ43.7±8.05,39.4±6.57で,有意に低下していた(p=0.005).同様に血圧の平均値は,収縮期血圧で131±17.8mmHg,125±16.2mmHg (p=0.018),拡張期血圧で73±7.3mmHg,70±6.6mmHg (p=0.016)といずれも低下していた.唾液アミラーゼ,CRPには変化が見られなかったが,血清コルチゾールは,7.7±3.16µg/dL,6.1±1.82µg/dL(p=0.027)と低下していた.温泉観光ツアーは,4泊5日という短期間でも,高齢者において,心身のストレスを軽減する効果があることが示唆された.

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© 2019 日本温泉気候物理医学会
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