日本温泉気候物理医学会雑誌
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調査
あん摩マッサージ指圧師養成施設における腰痛予防教育の実態調査
—視覚障害の有無による指導方法の違い—
星 慎一郎矢倉 千昭根地嶋 誠
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2020 年 83 巻 2 号 p. 74-81

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抄録

  【目的】あん摩マッサージ指圧師(以下,あマ指師)養成施設における腰痛予防教育の実施内容が,晴眼者対象と視覚障害者対象の施設種別によって違いがあるかを明らかにすることを目的に,全国の養成施設の昇降式治療台の使用の有無,腰痛予防教育の実施の有無などを比較検討した.

  【方法】方法は,あマ指師を養成する85施設を対象とし,調査用紙を郵送した.データの分析は記述統計から割合を算出した.施設種別と腰痛予防教育の実施の有無は,他の設問の回答に対してカイ二乗検定で比較した.

  【結果】調査用紙に回答した52施設中,晴眼者対象の8施設では腰痛予防教育を実施していたのが8施設(100%),視覚障害者対象の44施設では腰痛予防教育を実施していたのが22施設(50%)であった(p<0.001).無回答の1施設を除いた51施設中,晴眼者対象の8施設では昇降式治療台を使用していたのが1施設(12.5%),視覚障害者対象の43施設では昇降式治療台を使用していたのが43施設(100%)であった(p<0.001).昇降式治療台を使用していた44施設中,腰痛予防教育を実施していた23施設では,治療台の高さを指導していたのが23施設(100%)であった(p=0.008).昇降式治療台を使用していた44施設中,治療台の高さと施術姿勢の指導については,複数の施設で共通した指導方法がなかった.

  【考察】あマ指師養成施設では施術姿勢の指導を重視しているが,治療台の高さを指導することで腰痛予防に繋がると考えられている.体系的な腰痛予防教育を実施するためには,多くの養成施設で共通した指導方法が求められる.

  【結論】あマ指師は,晴眼者対象施設では昇降式治療台を用いる施設が少なく,視覚障害者対象施設では腰痛予防教育を実施する施設が半数に留まっており,腰痛予防教育の実施内容に偏りがあることが示唆された.

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