日本温泉気候物理医学会雑誌
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報告
国民保養温泉地において長期滞在需要を高めるには何が必要か~現地調査に基づく考察から~
藤本 和弘
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2020 年 83 巻 2 号 p. 82-92

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抄録

  温泉地の空間構造が変容した現在においては,長期滞在にふさわしい寛ぎ空間の創出が求められている.環境省の「新・湯治」推進プランにおいても,温泉地の周辺環境を含めた地域資源を活用した空間価値や体験価値を付加した寛ぎ空間の創出が求められている.さらに,ストレス社会といわれる現代においては,「温泉地の外部環境との良質なコミュニケーションの存在がストレスを解消する」という見方もできる.このことは,温泉地の外部環境が長期滞在のための寛ぎ空間として活用されている状況があるかどうかに関心を持たせる.

  そこで,「新・湯治」政策の先進的取り組みを進める温泉地として位置づけられている国民保養温泉地において,長期滞在需要を高めるためにどのような取り組みが行われているかを調査した.本報告では,るり渓高原温泉,浜坂温泉,梅ヶ島温泉,畑毛温泉,平湯温泉,田沢温泉,鹿教湯温泉,一里野温泉における取り組み状況を調査し報告する.その結果から,滞在需要を高めるプランづくりには5つの方法があることを明らかにした.これらの方法は組み合せも可能であり,温泉地の外部環境を分析し,長期滞在にふさわしい組み合わせができれば,長期滞在需要を高められる可能性があることを調査事例から明らかにした.

  そして,当該温泉地とその周辺の自然,文化歴史資源を含む外部環境を活用し,多様な散策やウォーキングコースとしてプランづくりできるかが,長期滞在の可能性を高めることになると結論づけた.

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© 2020 日本温泉気候物理医学会
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