日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
冷え性の病態と原因に関する研究—舌下温,体表温,静脈血ガス分圧とPDE-5阻害薬タダラフィル内服の効果—
皆川 翼大久保 健作田中 信行
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2020 年 83 巻 2 号 p. 63-69

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抄録

  【背景と目的】冷え性は女性に多く,寒冷時に手指,下腿等に強い冷感を自覚するものである.その病態から末梢静脈の過収縮による血液うっ滞を疑い,寒冷時の舌下及び手足末梢の体表温,静脈血ガス分圧の変化(pO2,pCO2)と,温熱で増加する一酸化窒素(NO)が血管で生成する環状グアノシンーリン酸(cGMP)分解酵素PDE-5の阻害薬タダラフィル(TDF)の効果を検討した.

  【対象と方法】対象は特別な疾病の既往や服薬がなく,閉経に至っていない50歳以下の女性17名である.問診で日中や夜間の冷え性状の有無・部位について確認し,冷え性のある女性(以下,冷え性群)10名(20~42歳,平均31.0±8.8歳)とない女性(以下,冷え性なし群)7名(22~33歳,平均26.4±3.7歳)に分けて検討した.測定項目はBMI,血圧,心拍,舌下温,体表温,静脈血ガス分圧,指尖動脈血酸素飽和度である.研究は11月から3月初旬の外気温12℃以下の時に行い,測定は室内(約23℃)と室外の寒い風除室(約12℃)で行い,その後,TDF錠10mgを内服させ,翌日の同刻に再度測定を行った.

  【結果】両群の指尖動脈血酸素飽和度は,室内,室外,TDF内服後とも差はなかった.室内では舌下温,静脈血ガス分圧の差もなかったが,室外では冷え性群の体表温の低下,静脈血pO2低下,pCO2上昇が大きい者が多かった.TDF内服後は,寒い室外での舌下温と体表温低下度は両群ともに改善するが,冷え性群での改善が大きかった.

  【考察】指尖動脈血酸素飽和度の正常から,冷え性は心肺・動脈系の障害ではなく,寒い室外での著明な体表温低下や末梢静脈血pO2の低下,pCO2の上昇から,寒冷による末梢静脈,または動静脈吻合(AVA)の過収縮による血液うっ滞が原因と思われる.また冷え性者におけるTDF内服の効果から,血液うっ滞におけるNO,あるいはcGMPの関与が示唆された.

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© 2020 日本温泉気候物理医学会
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