日本温泉気候物理医学会雑誌
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症例報告
専門医との連携で金属アレルギーのリスク管理が良好であった鍼治療の1症例
藤田 洋輔菊池 友和山口 智関谷 剛坂本 歩竹治 真明
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2025 年 88 巻 2 号 p. 88-96

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抄録

  目的:鍼治療は主にステンレス鍼を用いる.しかし,金属アレルギーを有する患者では鍼素材の考慮も必要となる.今回,専門医と連携しアレルギー症状のリスク管理が良好であった症例を経験したので報告する.

  症例:35歳女性.主訴は月経随伴症状,頸部痛,腰痛で,24歳で2子の出産後より月経諸症状が出現し,頸腰部痛は慢性的に感じていた.漢方や鍼治療の受診希望があり今回当科を受診した.なお,金属アレルギー症状を有することも聴取された.

  経過:患者の鍼治療の希望は強く,当科アレルギー専門医と相談し皮膚科専門医へ精査依頼の上,症状や所見より頸部筋筋膜性疼痛や非特異的腰痛(関節性・筋性),月経前症候群を疑い,鍼治療は金属アレルギーを考慮しチタン製円皮鍼の貼付や樹脂製皮膚鍼の押圧とし,隔週で計3回行った.1か月後,パッチテストで硫酸ニッケルの陽性(ICDRG基準:48時間後+,72時間後++,9日後+)が判明し,当科同医師と相談し患者同意の上,手足遠位部にシリコーンコーティング・ステンレス鍼を刺鍼し15分間留置,更に治療後や次回まで経過観察を行った.第5回目より頸腰部局所も刺鍼に変更したが,全てアレルギー症状の出現はなかった.

  考察・結語:本症例において,専門医との連携により金属アレルギー症状の出現はなく安全に鍼治療が行えた.今後はリスク管理や早期発見を考慮した専門医との連携,鍼灸師への金属アレルギーの啓発による安全な鍼治療の提供,更に対応の蓄積を行い安全性の高い鍼治療の確立を目指したい所存である.

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