日本温泉気候物理医学会雑誌
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地域在住高齢者の入浴時の循環動態反応
—浸漬方法・温度の違いから—
鈴木 知明渡辺 修一郎
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論文ID: 2325

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抄録

  【目的】家庭の浴槽での溺死者は年々増加傾向にあり,そのうちの約9割が65歳以上の高齢者である.いきなり全身浴するよりまずは半身浴し,一定時間経過後に全身浴とした方が循環動態に及ぼす影響が小さいのではないかという仮説を実証することを目的とした.

  【方法】地域在住の健常高齢者,男性10名(70.3±4.0歳)を対象として,6分間の全身浴と3分間の半身浴後に3分の全身浴(計6分間)の2パターンの浸漬方法で,湯温39℃と41℃の場合の入浴を実施した.測定項目は収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),脈拍(PR),酸素飽和度(SpO2),前額皮膚温とし,着衣安静坐位時,入浴後1分以内,2分後,3分後,5分後,出浴直後,安静坐位5分後の7回計測した.あわせて主観的温度感覚,快適感も口頭にて確認した.

  【結果】SBP(p=.010),DBP(p=.019)ともに入浴条件と測定時点の交互作用が有意であった.SBPは段階的浸漬の有無にかかわらず温度の影響が大きく,41℃では出浴直後の血圧低下が著しかった.DBPは41℃において全身浴のみの入浴の場合は,半身浴後の全身浴に比較し入浴中の血圧低下が著しかった.

  【考察】SBPは41℃では段階的浸漬の有無にかかわらず出浴直後の低下が著しかった.20mmHg以上低下しており起立性低血圧と同様の病態が生じていると考えられる.さらに,DBPも41℃の湯温において全身浴のみの入浴を行うと起立性低血圧時の変化に相当する10mmHg以上の低下がみられた.一方,半身浴後の全身浴では41℃においてもDBPの低下は10mmHg未満になっていることから,41℃の場合は先に半身浴をした方が急激な低下を抑制するといえる.

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