1997 年 1 巻 3 号 p. 4-13
人間が音声言語を理解する仕組みは,脳や聴覚などの観点から考えると基本的には普遍的なものと考えられなくもない。しかしながら,各言語の音韻構造が言語によって異なることから,この違いが音声言語の処理過程に反映することが十分有り得ると考えられる。この問題を理解するには,単一の言語の話者による研究もさることながら複数の言語の話者に対して同一の条件による対照研究の手法の方がより有効であることを,(1)連続音声における分節の単位,(2)語彙認識における超分節素の役割,(3)音素の処理過程,(4)心内語彙表示の音韻単位など,これまで実施した研究に基づいて論じる。