1984 年 25 巻 2 号 p. 11-18
植物の体細胞分裂観察法の一つにフォイルゲン核染色法を用いた方法がある。本法は染色体を特異的に染色することで細胞学研究の分野でよく利用されるが,細胞分裂観察実習の方法としてもすぐれた方法の一つとされている。しかし,本法を文献的に,また追試的に検討を加えた結果,従来の方法について,2,3の改善すべき点が見出された。本法でこれまで常用されていた45%酢酸の押しつぶし液に変わって,0.2%酢酸オルセインを,また細胞質の染色のためには同じく45%酢酸に代って0.5%~1.0%酢酸オルセインを用いれば,細胞分裂の過程を重視した観察実習のためには従来の方法よりも効果的であると思われた。さらに,理科の単位授業時間が50分であることを前提として,改善されたフォイルゲン核染色法の基本的手順を提案した。その要点は次の①~⑤である。①根端の採取 ②固定,酢酸アルコール(1:3)液 ③IN HCI処理,60℃ 8min。④シッフ試薬による染色,1~2hr,冷蔵庫内では24hr以上可 ⑤押しつぶし,押しつぶし液は0.2%酢酸オルセイン使用。