2009 年 13 巻 3 号 p. 44-52
本論文は,一見無関係で異質なものに見えるプロミネンスと有標性との間に,隠された共通の性質があることを主張する。具体的には,いわゆる強勢アクセントだけでなく,有標な分節メロディも,リズム交替の原理に支配されていることを実証する。リズム交替の原理とはいわばリズムという実体の根源的性質であり,それを定義する性質として「単一指向性」「反隣接性」「等時性の出現」を取り上げ,これらが2つの間で共有されていることを示す。その際,その性質を保つための音韻プロセスについても,2つの間に並行性があることも明らかにする。更に,事例研究として日本語を取り上げ,従来は和語だけに存在すると考えられてきたライマンの法則がある種の外来語にも成り立つ(単一指向性がある)だけでなく,そこに反隣接性も見出されることを実証する。本稿の帰結として,従来見過ごされてきた「有標性とプロミネンスの並行的性質」と「ライマンの法則の外来語への適用性」と「OCPの隣接性に関する新たな証拠」の発見が重要な意味合いを持つことになる。