音声研究
Online ISSN : 2189-5961
Print ISSN : 1342-8675
特集「英語音韻論の新たな事実 ・ 解釈 ・ 問題解決を掘り起こす」
英語における強勢の位置と比較級の形式(<特集>英語音韻論の新たな事実・解釈・問題解決を掘り起こす)
時崎 久夫
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2013 年 17 巻 1 号 p. 59-66

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抄録

英語の比較級は,形容詞に接尾辞(-er)を付加する形態的比較形とmoreを形容詞の前に置く迂言的比較形がある。この2つの形の選択には,音韻的な要因が関わっていると指摘されている(Mondorf 2003,Hilpert 2008)。本論は,この2つの形の交替を音韻的・類型的に検討する。世界の言語を,形態的比較形を持つ言語,迂言的比較形を持つ言語,両方を持つ言語に分けて,それらの語強勢の位置をデータベースで調べると,左寄りの語強勢を持つ言語は形態的比較級を持ち,右寄りの語強勢を持つ言語は迂言的比較級を持つことがわかる。両方の形式を持つのは,語の中間に強勢を持つ言語であり,英語はその一つである。データベースで共に「右寄り」(right-oriented)の強勢に分類されている英語とドイツ語などの強勢位置の違いについて論じ,英語が両方の比較形を持ち,ドイツ語などが形態的比較のみを持つことを説明する。

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© 2013 日本音声学会
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