音声研究
Online ISSN : 2189-5961
Print ISSN : 1342-8675
研究ノート
音韻・形態構造およびアクセントの音象徴―赤ちゃん用オムツの名前を題材とした事例研究―
熊谷 学而川原 繁人
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2022 年 26 巻 3 号 p. 97-108

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抄録

本研究は,赤ちゃん用オムツを題材として,韻律構造,アクセント核の有無,反復形という音韻的・形態的要素が持つ音象徴的な意味について探求した。具体的には,幼児語に顕著に現れる音韻的・形態的特徴を持つ名前は,赤ちゃん用オムツの名前としてふさわしいと判断されるという作業仮説に基づき,無意味語を用いた2つの実験により次の4つの問いを検証した。赤ちゃん用オムツの名前として,(a)韻律構造HLは,韻律構造LLLよりも好まれる。(b)韻律構造LHは,韻律構造LLLよりも嫌われる。(c)反復形は,非反復形よりも好まれる。(d)アクセント核を持つ名前は,無アクセントの名前よりも好まれる。実験の結果,これら4つの一部の仮説のみしか支持されず,様々な種類の重音節(H)およびアクセント核を持つ名前が,赤ちゃん用オムツの名前としてふさわしいと判断されやすいことがわかった。これらの結果は,実在語に関する既存知識からだけでは説明できず,日本語母語話者が「重音節(H)」や「アクセント核あり」という抽象的な音韻概念を用いて一般化を行っていることを示唆している。

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© 2022 日本音声学会
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