古代日本語のハ行子音は,語頭,母音間の両位置で摩擦音化が生じたことが知られている。まず,ハ行の変化に関して,自然性の観点から,母音間の変化が相対年代として語頭より先立つことを仮説として示し,大和中央語の変化の絶対年代について考察する。次に,古代語のpが一般語ではɸに,オノマトペアではpに分裂したとする推定に対し,キリシタン文献からうかがえる語頭ハ行のオノマトペアの状況から,オノマトペアにおいてもpの摩擦音化が生じたことを論じ,p>ɸがより規則的に起こったことを主張する。その他に,pの存在を示唆した文献研究,オノマトペア語根の母音間pに関する研究についても振り返り,残された問題について指摘する。