2025 年 29 巻 1 号 p. 114-122
本稿では電気声門図(EGG)を用いた声質分析の実験例を紹介した。具体的には,日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者による感情音声および態度音声を収録し,EGG信号による声門開放時間率を抽出して比較した。その結果,感情音声および態度音声ともに,発話者の母語によってパラ言語表出に際しての声帯振動様式が異なっており,中国語母語話者では声帯が緊張した発声となる状況が多くなる傾向が見られた。またこの傾向を示すのは中国語母語話者が中国語のパラ言語表出の特徴を保って発話しているためである可能性が示唆された。上記の実験結果を踏まえ,日本語教育の指導法を考案する際には,声質情報を提示するためにEGGを活用することを提案する。