日本語の顕著な音韻特性の一つとして,モーラ(拍)言語であることが挙げられる。その生理学的なメカニズムはほとんど知られていないが,近年,特殊拍の生理学的な性質を解明する研究がなされ,特殊拍の調音運動は自立拍の運動とは異なっていることが指摘されている。本稿は,こうした自立拍とは異なる特殊拍の調音運動が,発達の過程でどのように形成されたのかを明らかとするため,児童期における長音拍の生成を,口唇運動に着目して検討した。その結果,長音拍で口唇の開きの程度がより大きいことはなく,これは成人とは異なる結果であった。この結果は,調音運動の未発達の影響の可能性を示唆するものと考えた。