音声研究
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第一言語獲得
音韻理論と音韻獲得(第一言語獲得,<特集>音声の獲得)
太田 光彦
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2003 年 7 巻 2 号 p. 35-46

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抄録

本稿では音韻理論と音韻獲得論の発展史を発達継続性の問題を中心に述べる。継続性の問題とは言語の発達過程において音韻体系の根本的特性が保持される程度を示す。理論構築の観点からみると継続性の高い獲得過程の説明のほうが望ましいが,どの程度の継続性を獲得理論に組み込むことが出来るかは基盤となる音韻理論にも左右される。実際,SPEから自然音韻論,原理とパラメータ理論,最適性理論と4つの生成音韻理論をもとにした獲得モデルを時代順にみると徐々に継続性が高まっていく傾向が見受けられ,音韻理論と音韻獲得理論が相互的に発展した過程がうかがえる。しかし,このような研究の方向性に問題点がないわけではない。ここでは,1)幼児期現象のすべてが音韻理論で説明されるべきか,2)成人期音韻現象のすべてが幼児期体系と関連づけされるべきか,3)語彙表示の内容はどのように変化していくのかという三つの点を検討してみた。

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© 2003 日本音声学会
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