帯広大谷短期大学紀要
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イネ科作物の子実におけるグリセロ脂質の分子種に関する研究 その5
間野 康男
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2000 年 37 巻 p. 1-13

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抄録
1.玄米粒の脂質は、90%が中性脂質からなっており、その中ではTGがもっとも多かった。糖脂質にはステロール配糖体が、リン脂質にはPC、PEおよびPIが多かった。2.構成脂肪酸は、いずれの両分でもリノール酸、オレイン駿およびパルミチン酸の三つで全体の90%以上を占めていた。3.ステロール配糖体のステロールは、シトステロールが過半を占め、また、主たる構成糖はグルコースてあった。4.米粒のデンプンとプロティンボディの主な脂質は、前者がリゾリン脂質、後者は遊離脂肪酸てあった。その主な構成脂肪酸は、前者がパルミチン酸、後者はリノール酸であった。5.日本型イネの子実でも、寒冷地産のTGにはリノール酸の割合が高かったが、温暖地産(日本型イネ)と熱帯産(インド型イネ)にはオレイン酸の割合が高かった。日本型イネの米糠TGの脂肪酸組成には、品種間の違いは見られなかった。6.玄米粒のTGの分子種組成は、パルミトイルオレオイルリノレインが全体の15-18%を占めていた。寒冷地塗には比較的不飽和度の高いオレオイルジリノレインが多かったが、一方、温暖地と熱帯産にはそれの低いパルミトイルジオレインが多かった。日本型イネの米糠TGの分子種組成は、互いに類似していた。7.寒冷地産米のPCとPEのDG残基にはジリノレイン型が多かったが、温暖地と熱帯産米のそれらにはパルミトイルオレイン型が多かった。これに対してPIでは、共通してパルミトイルリノレイン型が多かった。また、MGDGやDGDGには日本型イネの子実にジリノレイン型やリノレオイルリノレニン型が多かったが、インド型イネの子実ではオレオイルリノレイン型やパルミトイルリノレイン型が多かった。8.トウモロコシ子実の脂質では中性脂質が全体の95%を占め、その中ではTGがもっとも多かった。TGをはじめ各脂質クラスの構成脂肪酸の分子内配置に、異同が見られた。また、TGの1、2-DG残基とPCおよびPEの主要な分子種はジリノレイン型、オレオイルリノレイン型およびパルミトイルリノレイン型であった。一方、DGDGのそれは多様でジリノレニン型、オレオイルリノレイン型およびジリノレイン型などであった。9.ライムギ子実の脂質では中性脂質が全体の70%を占め、その中ではTGがもっとも多かった。糖脂質は11-14%、リン脂質は16-18%であった。全脂質の構成脂肪酸は、リノール酸が60%てあった。また、4-DeMSのステロールは、シトステロールとカンペステロールで全体の90%を構成していた。10.もっとも多い分子種はTGでトリリノレイン、MGDGとDGDGでジリノレイン型、PCとPEてはジリノレイン型であったが、PIではパルミトイルリノレイン型であった。
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