耳鼻咽喉科展望
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臨床
内視鏡下鼻内手術にて切除可能であった早期鼻中隔癌の2症例
西嶌 嘉容清野 洋一青木 謙祐飯田 誠加藤 孝邦
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2011 年 54 巻 5 号 p. 273-278

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抄録
鼻中隔癌は鼻副鼻腔癌の中で比較的稀であり, 手術治療の場合は主に鼻外切開 (lateral rhinotomy) にて腫瘍切除をすることが多い。鼻中隔癌の中でも, 限られた症例ではあるが, 内視鏡下鼻内手術にて根治切除可能な症例もあり, 今回その2症例について報告する。
1例目は47歳女性で, 主訴は鼻閉, 両側耳閉感であり, 所見としては, 鼻中隔後端から上咽頭方向に向かう腫瘍を認めた。組織生検での病理結果ではpapillary adenocarcinomaであり, 鼻中隔癌 (T1N0M0) の診断に至り, 内視鏡下鼻内手術での腫瘍切除術を施行した。
2例目は43歳女性で, 主訴は鼻汁過多, 左鼻閉であり, 所見としては, 左の鼻中隔から鼻腔に突出する腫瘍を認めた。組織生検での病理結果はpapillary squamous cell carcinomaであり, 鼻中隔癌 (T1N0M0) の診断に至り, 1例目と同様に内視鏡下鼻内手術での腫瘍切除術を施行した。2症例とも術後の病理組織学的切除断端は陰性であったため, 後治療は行わず, 現在のところ再発はなくそれぞれ術後2年8ヵ月, 2年1ヵ月経過している。
早期鼻中隔癌の場合, 鼻外切開を用いずに内視鏡下鼻内手術にて根治切除可能な症例がある。切除可能な症例の条件としては, 腫瘍が鼻中隔に限局し, 安全域をつけた腫瘍切除が可能である病変であることが原則である。しかし腫瘍が鼻腔を充満してしまうほど大きくなると, 内視鏡下でのワーキングスペースがとれないため, en-blockでの腫瘍切除が困難となり, その手術適応からは除外される。
これらの条件を満たすような症例であれば, 手術治療のみで治療の完結が可能であり, また外切開を用いないことから審美的にも有用な治療手段であると考える。
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