2011 年 54 巻 5 号 p. 309-312
良性腫瘍に対する鼻内内視鏡手術は, 広く行われている。近年, 悪性腫瘍である嗅神経芽細胞腫に対しても内視鏡手術が行われてきているが, 十分な安全域を確保しての一塊切除は困難であると思われる。また, 内視鏡的な頭蓋底再建では術後照射を行った際に髄膜炎などの不安が残る。そのため, 我々は鼻内内視鏡手術と前頭開頭による前頭蓋底手術を組み合わせた内視鏡支援下前頭蓋底手術を行ってきた。
2004年1月から2008年12月までに, 内視鏡支援下前頭蓋底手術を行った嗅神経芽細胞腫の8症例を対象に検討を行った。髄膜炎などの重篤な合併症や手術関連死は認めなかった。軽微な鼻内感染を4例に認めたが保存的治療が可能であった。2年生存率は100%であったが, 2年局所制御率は35.7%であった。局所再発例では内視鏡的切除と放射線治療にて全例制御が可能であった。
本術式は安全性が高い術式である。ただし局所制御率が低いことから, 何らかの補助療法の必要性があると考えられた。今後, 各施設より経鼻内視鏡下前頭蓋底手術の合併症頻度および長期成績が発表されると思われる。それらの成績と比較対照して我々の術式の適応について改めて検討したい。