抄録
浸潤性副鼻腔真菌症による内頸動脈仮性動脈瘤が原因で発症した大量鼻出血の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は70歳男性で, 右眼視力低下を主訴に当院を受診した。既往に原発性マクログロブリン血症があり, プレドニン15mg/dayを常用していた。画像所見で右蝶形骨洞に軟部濃度陰影と骨不整像を認めたため, 鼻性視神経炎を疑い内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行った。病理検査にて急性浸潤性副鼻腔真菌症と診断し, 抗真菌薬と全身状態改善治療を行った。状態が改善したため退院となったが, 第82病日に鼻出血を主訴に当科を再受診した。外来処置中, 突然の大量鼻出血を認めたため手術室に移動し, ガーゼを挿入し一時的に止血した。1週間後, 手術室にてガーゼ抜去を試みたところ, 大量出血を認めたためガーゼを再度挿入し圧迫止血した。CT Angioを行ったところ, 内頸動脈の仮性動脈瘤を認めたため, 脳神経外科にて内頸動脈コイル塞栓術を行った。塞栓術後は良好であったが, 意識障害が出現し永眠された。
蝶形骨洞内の真菌症を疑った時点で頭部MRAngioもしくはCT Angioを施行し, 動脈瘤を確認することが重要であったと思われた。