抄録
顎下部に発生した粘液腫の1例を経験したので報告する。
症例は60歳男性。右顎下部腫瘤を主訴に当科を受診した。頸部単純MRIにて, 右顎下部の広頸筋直下にT1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号を示す20×16×12mmの境界明瞭な腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診にて, 脂肪肉腫 (Class V) が疑われた。局所麻酔下に周囲脂肪組織を付けて腫瘤を摘出した。術後の病理組織検査にて粘液腫と最終診断した。頭頸部領域に発生する粘液腫は稀であり, 術前診断としての穿刺吸引細胞診による確定診断が難しい良性腫瘍である。加えて被膜の部分的欠落や周囲組織への浸潤傾向を示すケースもあり, 一方で脂肪肉腫や他の粘液変性を伴った腫瘍との鑑別が必要となることから, 再発のない切除のためには, 細胞播種に配慮した切除法を選択することが望ましい。