抄録
中耳炎後遺症例の人工内耳聴取能について, 福田版聴取評価を基に検討を行った。 子音の異聴の検討では, 無声と有声の弁別は容易であること, 有声接近音・通鼻音, 無声破裂音の正答率がその他の構音様式と比較して高いという特徴があった。 個別の子音に注目すると, b→w, dz→s, ʢ→tʃ, h→s, m→n と異聴傾向があった。 リハビリテーションの子音課題では, これらの弁別課題を中心にリハビリテーションを行うことで, より効果の高い聴取訓練が可能であると考えられた。 中耳炎後遺症例は, ラセン神経節の変性がなかったという報告があるが, 今回我々の検討した結果, 内耳性難聴により失聴した症例と比較して高い成績ではなかった。 中耳炎が引き起こす内耳障害は, ラセン神経節より中枢の蝸牛軸に及んでいる可能性が考えられた。