耳鼻咽喉科展望
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臨床
放射線治療後の再発喉頭癌に対する救済手術の有用性
波多野 篤岡野 晋青木 謙祐清野 洋一齊藤 孝夫加藤 孝邦
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2014 年 57 巻 5 号 p. 256-264

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抄録

 目的: 放射線治療後に局所非制御の喉頭癌に対して救済手術を施行した症例を対象として, 臨床経過, 合併症および予後などの検討を行うことで救済手術の有用性を検討すること。
 対象と方法: 東京慈恵会医科大学附属第三病院耳鼻咽喉科において放射線治療を施行した喉頭癌症例のうち, 局所制御されず救済手術を施行した10症例である。 男性8例, 女性2例, 年齢58~92 (平均71.6) 歳で, 観察期間は術後9~115 (平均49.9, 中央値40.5) 月であった。 術後の臨床経過と共に, 合併症と予後などに関して検討を行った。
 結果: 初発時, 声門上型 T2 2例, 声門型 T1a 3例, T1b 2例, T2 2例, 声門下型 T2 1例で全例 N0M0 であった。 一次治療は主に T1症例に対しては放射線単独治療が, T2症例には化学放射線治療が施行された。 一次治療4~137ヵ月後 (平均31.7, 中央値18) に再発病変が認められた。 再発時, 声門上型 rT1N1 1例, rT2N0 1例, rT3N1 1例, 声門型 rT1N0 1例, rT2N0 2例, rT3N0 1例, rT4aN0 1例, 声門下型 rT3N0 1例, rN2a 1例であった。 二次治療では, 水平部分切除術が2症例に, 垂直部分切除術が2症例に, 喉頭全摘術が5症例に, 頸部郭清術単独が1症例に施行された。 術後, 咽頭皮膚瘻が2例に, 軟骨壊死が1例に生じたが, いずれも保存的治療にて軽快した。 予後では, 5症例は非担癌生存中であるが, 1例では他病死がみられ4例は原病死したが原発巣は全例制御されていた。
 結語: 救済手術の術後経過では, 創部感染症の発生が増すものの重篤な合併症は少なく, 原発巣の制御は良好であった。 再発時のステージによっては喉頭全摘出術ばかりでなく喉頭機能温存が可能な症例もあり, 救済手術は有用であると考えた。

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