耳鼻咽喉科展望
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57 巻, 5 号
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カラーアトラス
綜説
  • ―実地臨床における診断と治療のポイント―
    余田 敬子
    2014 年 57 巻 5 号 p. 246-255
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
     梅毒は, 梅毒トレポネーマ (Treponema pallidum) を病原体とする全身性の慢性感染症で, 口腔咽頭の梅毒病変はその特徴的な所見から他の疾患との鑑別は比較的容易で梅毒の診断の契機となりやすい。 梅毒第1期では無痛性の初期硬結または硬性下疳が, 口唇, 扁桃, 舌尖に生じる。 第2期では口角炎や粘膜斑 (乳白斑) が生じ, 痛みや違和感を訴える。 検査には, 梅毒トレポネーマを鏡検する直接法と梅毒血清反応があり, この二つの検査結果から総合的に診断する。 治療には, 天然製剤のベンジルペニシリンベンザチンが最も有効で, 1回400万単位 (入手できない場合にはアモキシシリン1回500mg) を1日3回, PC アレルギーの場合は MINO 100mgを1日2回, 第1期は2~4週間, 第2期は4~8週間, 感染後1年以上または感染時期不明の場合では8~12週間経口投与する。 口腔咽頭梅毒は性交渉を介して相手に感染させる可能性が高い病変であるため, 感染拡大防止のためにも適切な診断治療が重要となる。
臨床
  • 波多野 篤, 岡野 晋, 青木 謙祐, 清野 洋一, 齊藤 孝夫, 加藤 孝邦
    2014 年 57 巻 5 号 p. 256-264
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
     目的: 放射線治療後に局所非制御の喉頭癌に対して救済手術を施行した症例を対象として, 臨床経過, 合併症および予後などの検討を行うことで救済手術の有用性を検討すること。
     対象と方法: 東京慈恵会医科大学附属第三病院耳鼻咽喉科において放射線治療を施行した喉頭癌症例のうち, 局所制御されず救済手術を施行した10症例である。 男性8例, 女性2例, 年齢58~92 (平均71.6) 歳で, 観察期間は術後9~115 (平均49.9, 中央値40.5) 月であった。 術後の臨床経過と共に, 合併症と予後などに関して検討を行った。
     結果: 初発時, 声門上型 T2 2例, 声門型 T1a 3例, T1b 2例, T2 2例, 声門下型 T2 1例で全例 N0M0 であった。 一次治療は主に T1症例に対しては放射線単独治療が, T2症例には化学放射線治療が施行された。 一次治療4~137ヵ月後 (平均31.7, 中央値18) に再発病変が認められた。 再発時, 声門上型 rT1N1 1例, rT2N0 1例, rT3N1 1例, 声門型 rT1N0 1例, rT2N0 2例, rT3N0 1例, rT4aN0 1例, 声門下型 rT3N0 1例, rN2a 1例であった。 二次治療では, 水平部分切除術が2症例に, 垂直部分切除術が2症例に, 喉頭全摘術が5症例に, 頸部郭清術単独が1症例に施行された。 術後, 咽頭皮膚瘻が2例に, 軟骨壊死が1例に生じたが, いずれも保存的治療にて軽快した。 予後では, 5症例は非担癌生存中であるが, 1例では他病死がみられ4例は原病死したが原発巣は全例制御されていた。
     結語: 救済手術の術後経過では, 創部感染症の発生が増すものの重篤な合併症は少なく, 原発巣の制御は良好であった。 再発時のステージによっては喉頭全摘出術ばかりでなく喉頭機能温存が可能な症例もあり, 救済手術は有用であると考えた。
  • 山崎 ももこ, 櫻井 結華, 小宮 清, 小島 博己, 宮本 康裕, 俵道 淳, 肥塚 泉, 森山 寛
    2014 年 57 巻 5 号 p. 265-275
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
     医師の専門性を要求される現在の社会環境において, 教育機関として耳鼻咽喉科を目指す医師に対してわかりやすい目標とその達成度を評価できる教育システムの構築が必要と考えた。 まずは, 目標を数値化できるわかりやすい手術件数で「技術の可視化」をすることを試みた。
     東京慈恵会医科大学附属病院の耳鼻咽喉科医師を対象に検討した結果, 耳鼻咽喉科経験10年前後で特定の部位の手術に特化する傾向が見られた。 全国調査でも, 耳鼻咽喉科経験10年前後の医師が医育機関から病院や診療所に移行する時期であるので, 耳鼻咽喉科経験10年未満の医師を対象に教育目標を設定した。
     次に6大学の耳鼻咽喉科医師 (156名) を対象に耳鼻咽喉科の手術件数に関するアンケートを実施した。 その結果, 対象手術を「5年未満に独り立ちできる手術」, 「10年未満に独り立ちできる手術」, 「10年以上で独り立ちを目指す手術」の3グループに分類した。 対象手術の目標件数は, 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科医局において経験10年以上の医師のアンケートの平均値を採用した。
     このように, 耳鼻咽喉科医の育成のために, 目に見える目標を設定することができたが, このようなシステムは我々の知りうる限りは見当たらず, 大変有意義なものと考える。 また, 今後このシステムを導入, 有効性を検討していく予定である。
  • 小松﨑 貴美, 松脇 由典, 鷹橋 浩幸, 加藤 雄仁, 西谷 友樹雄, 三浦 正寛, 飯村 慈朗, 太田 史一
    2014 年 57 巻 5 号 p. 276-284
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
     呼吸上皮腺腫様過誤腫は, 片側あるいは両側の鼻腔に多く発症する良性の腫瘤で, ポリープ様の腫瘤を呈する。 鼻閉, 鼻漏, 嗅覚障害など副鼻腔炎と同様の症状を示し, 臨床的には慢性副鼻腔炎として取り扱われている場合が多い。 組織学的には,粘膜下の腺腫様増殖や線毛呼吸上皮が一列に並んだ腺組織の著明な増殖が特徴である。 発生が最も多いのは, 嗅裂部, 鼻中隔とされ, 臨床的には好酸球性副鼻腔炎との鑑別をも要する。
     今回我々は好酸球性副鼻腔炎の診断基準である JESREC Study (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study: JESREC Study) の診断基準から, 手術前には好酸球性副鼻腔炎高度リスク群と判断したが, 手術標本から病理組織学的に呼吸上皮腺腫様過誤腫と診断するに至った症例を経験したので報告する。 症例は26歳女性。 4年前より気管支喘息, 1年半前より嗅覚障害, 鼻漏を自覚した。 初診時, 両側鼻腔内にポリープが充満し, CT 上嗅裂, 篩骨洞内に軟部組織像を認めた。 血中好酸球数は7.3%と上昇していた。 以上より, 手術前は JESREC Study の診断基準から好酸球性副鼻腔炎高度リスク群と判断した。 両側内視鏡下汎副鼻腔手術 (IV型) を施行し, 嚢胞状病変を含んだ肥厚性嗅裂粘膜と中鼻道ポリープを病理に提出した。 組織学的に, 好酸球浸潤は少なく, 粘膜内の腺組織は胞巣状に多数増生しており, 加えて単層性の管腔構造に好酸性に染まる粘液が貯留している像を呈していたことから, 呼吸上皮腺腫様過誤腫と診断した。 手術後, 経過は良好で, 再発は認められていない。 現行の好酸球性副鼻腔炎の診断基準では手術前の組織学的所見に関しては必須項目ではなく, その手術前診断は困難である。 呼吸上皮腺腫様過誤腫の場合, 完全切除すれば再発が少なく, 余剰な治療を必要としない。 慢性鼻副鼻腔炎の除外診断の1つに呼吸上皮腺腫様過誤腫という病態の可能性を考慮すること, また手術後の病理学的診断が重要であると考えた。
境界領域
  • 敷島 敬悟
    2014 年 57 巻 5 号 p. 285-292
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
     眼窩には, 骨, 外眼筋, 末梢神経, 中枢神経系の視神経, 血管, 脂肪, 外分泌腺の涙腺など様々な組織があり, 多種多様な腫瘍が発生する。 このため, 眼窩腫瘍の病態は多彩で, 頻度も少なく, 手術経験の蓄積と習得は甚だ難しい。 眼窩腫瘍摘出術に臨むにあたって, 眼窩の詳細な解剖を熟知しておくべきで, 外眼筋や眼窩内の線維性組織の解剖は手術に際し注意を要する。 眼窩腫瘍のうち最多は特発性眼窩炎症と悪性リンパ腫を含むリンパ増殖性疾患で, 次いで, 涙腺上皮性良性腫瘍 (多形腺腫), 皮様嚢腫や表皮様嚢腫, 血管腫, 神経鞘腫, 髄膜腫が多い。 眼窩腫瘍の頻度, 臨床症状, 画像所見から疾患を鑑別し, 手術の適応, 摘出範囲, 到達法を術前にプランニングすることが重要である。 手術法のうち主な経皮膚―経隔膜前方到達法と眼窩側壁切開法 (Krönlein法) について具体的な手術法とコツを述べる。
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薬剤の特徴と注意点
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