耳鼻咽喉科展望
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臨床
閉塞性睡眠時無呼吸に対する鼻手術の効果について
―Cyclic Alternating Pattern を用いた検討―
森脇 宏人和田 弘太千葉 伸太郎恩田 信人澤井 理華吉越 彬渡邊 統星安藤 裕史内田 亮八木 朝子吉川 衛
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2014 年 58 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

 閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea: OSA) は肥満, 顎顔面形態異常, 上気道疾患, 加齢など様々な原因により引き起こされる疾患である。 治療は各要因に応じて, 減量, 手術, 経鼻的持続陽圧呼吸療法, 口腔歯科装置などによる治療が単独または組み合わせて行われる。 特に, 鼻呼吸障害を有する OSA 患者の鼻手術治療単独の効果については, 重症度である無呼吸低呼吸指数を有意に改善させるという報告は少なく, いびきや Quality of Life が改善するといった報告が多い。 また, その治療評価は終夜睡眠ポリグラフ検査 (PSG) によって行われるが, 無呼吸低呼吸指数などの呼吸パラメーターや従来の睡眠段階判定法による睡眠パラメーターには変化があまりみられない患者を経験することがしばしばある。 そこで, われわれは新しい試みとして, OSA 患者に対し鼻腔形態改善手術 (鼻中隔矯正術および下鼻甲介粘膜切除術) の前後で終夜睡眠ポリグラフ検査を施行し, 通常の睡眠脳波解析に加え, 自覚的な睡眠の満足度と相関が高くノンレム睡眠における睡眠の不安定性を表すとされている cyclic alternating pattern (CAP) による評価を行い, どのような傾向があるかまずは3例について検討した。 3例すべてにおいて, 問診による自覚的な睡眠の満足度は向上していた。 術後の PSG にて, 無呼吸低呼吸指数は1例のみ改善を認めたが, 他の2例は変化がみられなかった。 また, 睡眠段階については術後1例で深睡眠が微増したものの, 2例で減少していた。 一方, CAP による解析では, ノンレム睡眠の不安定性の指標である CAP 率が全例において低下しており, 睡眠が安定する傾向がみられた。 ノンレム睡眠が安定したことによって睡眠に対する自覚的満足度の改善がみられたと推測した。 今後, 睡眠の主観的な評価と合わせて検討することで, 睡眠の質を客観的に評価できる可能性が考えられた。

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