耳鼻咽喉科展望
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臨床
意識障害を来した蝶形骨洞炎による硬膜外膿瘍の1例
白井 杏湖大塚 康司小川 恭生河口 幸江波岡 那由太小山 俊一赤井 知高羽生 春夫鈴木 衞
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2015 年 58 巻 2 号 p. 99-105

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抄録

 高齢者の意識障害として発見された蝶形骨洞炎に続発した硬膜外膿瘍・髄膜脳炎の1例を報告する。
 症例は75歳, 女性。 自宅で倒れているところを発見され当院に入院した。 発熱と意識障害を認め, 感染源精査により蝶形骨洞炎と硬膜外膿瘍を認めた。 蝶形骨洞炎による頭蓋内合併症を考え, 入院7日目に内視鏡下副鼻腔手術を施行した。 術後, 解熱し意識状態の改善はみられたものの不安定であった。 画像所見では硬膜外膿瘍と蝶形骨洞炎は改善していたが, 大脳基底核に脳炎を疑う所見を認め, 脳炎の続発によって軽度意識障害が遷延していると考えられた。 その後抗菌薬投与のみで徐々に意識状態は改善した。
 本症例は感染源である蝶形骨洞炎に対し内視鏡下副鼻腔手術を施行し, 硬膜外膿瘍と脳炎に対しては保存的加療のみで軽快した。 蝶形骨洞の解剖学的特徴から, 副鼻腔炎症状が先行せず非特異的症状のみで経過し, 重篤な合併症を生じるまで発見が遅れる可能性がある。 原因不明の意識障害では副鼻腔炎による頭蓋内合併症も念頭に入れ精査を行い, 抗菌薬の投与に加え, 副鼻腔手術や頭蓋内手術, もしくはその両方の施行を検討するべきである。

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