耳鼻咽喉科展望
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綜説
子どもの中耳炎の診断と治療: 特に手術適応について
伊藤 真人
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キーワード: 小児, 中耳炎, 手術適応, 合併症
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2017 年 60 巻 2 号 p. 62-68

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抄録

 中耳炎には急性中耳炎, 滲出性中耳炎, 慢性中耳炎がある。 本稿では小児特有の注意点に配慮しながら, それぞれの中耳炎の診断と手術について述べる。

 急性中耳炎の手術適応は, 反復性中耳炎で保存治療が無効なときに行われる鼓膜チューブ留置術と, 急性乳様突起炎などの合併症を来した場合の乳様突起削開術である。 近年わが国では, 急性乳様突起炎は保存的治療で治癒する疾患であると考えられがちだが, 側頭骨内・頭蓋内の重篤な合併症の危険も高く乳様突起削開術の適応を見誤ってはならない。 また2歳を過ぎても急性中耳炎を繰り返す場合には, 安易に反復性中耳炎と考えずに, 先天性真珠腫などの他の中耳疾患や先天性免疫異常症が隠れていないか注意が必要である。

 滲出性中耳炎に関しては, わが国の「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015」による診断と治療のポイントを解説する。

 小児の慢性中耳炎では中耳が発育途上にあることと, 耳管機能の未熟さが問題となる。 また小児真珠腫性中耳炎は再発率の高い疾患であり, 初回手術で完全に取りきらないと再発を繰り返す。 したがって, 熟練した術者が良好な視野と術野を確保したうえで安全・確実な手術を行うべきである。

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