耳鼻咽喉科展望
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臨床
下咽頭から甲状腺へ迷入した巨大魚骨異物の1例
間宮 祥子井上 なつき柳原 健一久保田 俊輝山口 宗太穐山 直太郎吉川 衛
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2018 年 61 巻 2 号 p. 92-96

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抄録

 魚骨異物は耳鼻咽喉科で日常的に遭遇する疾患であり, 本邦では咽頭異物の原因で最多を占める。 今回われわれは, 下咽頭から甲状腺へ迷入した巨大魚骨異物を認め, 頸部外切開による摘出術により摘出した1例を経験したので報告する。 症例は, 49歳男性で, ブリを摂取した後からの嚥下時痛を主訴に受診した。 喉頭内視鏡検査では, 左側の喉頭披裂部から下咽頭梨状陥凹にかけて粘膜の腫脹を認めたが, 魚骨異物を確認できなかった。 しかし, 頸部造影 CT 検査で, 左側下咽頭梨状陥凹外側から甲状腺左葉内に約 40mm の線状の石灰化病変を認めたため, 咽頭腔外へ迷入した魚骨異物と考えた。 頸部外切開を行い, 甲状腺左葉より 42mm の巨大魚骨異物を摘出したが, 甲状腺内に膿瘍形成はなく, 術後の抗菌薬と副腎皮質ステロイド薬の投与により喉頭浮腫も速やかに改善した。 この症例のように魚骨異物が管腔外へ迷入すると, 内視鏡検査だけでは確認できないこともあるため, 異物の残存を強く疑う場合には画像検査が重要であると考えた。

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