2018 年 61 巻 5 号 p. 272-279
Lemierre 症候群は, 咽喉頭領域の先行感染に続発し内頸静脈の血栓性静脈炎から, 全身の遠隔臓器に血栓性塞栓をきたす全身感染症である。 今回われわれは, 早期に診断し適切な対応により合併症なく治療し得た症例を経験したため, 若干の文献的考察を加えて報告する。
症例は54歳, ミャンマー在住の日本人男性。 発熱, 咽頭痛に対し現地にて抗菌薬や解熱鎮痛薬を使用するも徐々に増悪し, 頸部腫脹も出現してきたため緊急帰国し当院救急外来を受診した。 頸部造影 CT にて左深頸部膿瘍, 左内頸静脈血栓性閉塞を認めたため Lemierre 症候群と診断した。 外科的ドレナージと抗菌薬にて治療を開始し, 第4病日より抗凝固療法も開始した。 その後, 血栓性合併症をきたすことなく速やかに改善し, 第32病日で抗菌薬を終了, 第52病日で抗凝固療法も終了となった。
Lemierre 症候群は現在では比較的まれな疾患とされているが, 咽頭痛や頸部痛, 頸部腫脹を診察する際に, 本疾患も念頭に入れ早期に対処することで重篤な合併症を防ぐことができると考えた。