耳鼻咽喉科展望
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臨床
鼻中隔嚢胞を経鼻内視鏡下に全摘出した1例
髙橋 恵里沙大村 和弘森 恵莉鴻 信義小島 博己
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2019 年 62 巻 3 号 p. 128-133

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抄録

 鼻中隔嚢胞は現在までに文献で報告されている13症例の報告のみと非常に稀な疾患であり, 治療方法は確立されていない。

 今回われわれは経鼻内視鏡下で全摘出術を施行できた鼻中隔嚢胞の1例を経験した。 症例は39歳男性。 7ヵ月前から鼻の疼痛を認め,前医を受診した。 右鼻中隔粘膜に腫瘤性病変を認め, CT 上骨融解も疑われたため, 当院を紹介受診した。 当院での診察および CT, MRI の画像所見から鼻中隔嚢胞の診断となり, 疼痛出現時に穿刺排膿を行い経過観察としていた。 しかし, その後も嚢胞の腫脹および感染に伴う強い疼痛を繰り返したため, 根治的治療の目的で手術の方針となった。

 鼻副鼻腔嚢胞は術後性上顎嚢胞に代表されるように, 過去に施行した外科手術後に発生することが多い。 嚢胞の病態からの手術アプローチとしては, 開窓術と全摘術があり, 主には開窓術が適応となることが多い。 鼻中隔嚢胞に対しての治療も同様に開窓術を行っている症例が多いが, 術後に多形腺腫や結核, 動脈瘤様骨嚢胞の診断となった症例が存在する。 このことから, 嚢胞の穿刺細胞診にて, 嚢胞上皮を認めない症例, または鼻中隔手術の既往がない症例では鼻中隔嚢胞以外の疾患が背景にあることを考慮し, 全摘術が推奨される。 一方で, 嚢胞による圧迫,浸潤のため, 鼻中隔軟骨や下顎骨が消失しており, 術前に鞍鼻や顔面の変形を伴う場合は, 術後の整容面を考慮し, 外切開を併用し顔面の再建をする必要がある。 術前に顔面変形を伴わない場合は, 術中操作の配慮のみで対応している。

 本症例では, 術中の視野およびワーキングスペースを確保し, L-strut の強度を損なうことなく嚢胞の全摘出術を施行することが可能であったので報告する。

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