耳鼻咽喉科展望
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62 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
カラーアトラス
綜説
臨床
  • 関根 大輝, 辻 富彦
    原稿種別: 臨床
    2019 年62 巻3 号 p. 114-120
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

     耳疾患をもたない健常者の耳管機能を調べるため, 20~50歳代の50人100耳について音響法, インピーダンス法 (バルサルバ法, トインビー法, 深呼吸, 鼻すすり) による耳管の開閉を検討した。 音響法では82.0%, インピーダンス法ではバルサルバ法で82.0%, トインビー法で65.0%が陽性を呈した。 音響法, バルサルバ法, トインビー法の3法すべてが陽性となったのは51%であった。 音響法における耳管開放時間は 105~2,455msec で平均値は 569.5msec であった。 音響法またはバルサルバ法で耳管の開閉が確認されない症例が全部で35耳あり, 中耳圧外傷のリスクが若干高いと考えられた。 開閉持続時間が 1,000msec を超える “音響法延長” 症例, および深呼吸, 鼻すすりによる “鼓膜変動” 症例があわせて16耳に認められ, 何らかの誘因とともに耳管開放症の症状が出る可能性のある潜在的な症例と推測された。 健常者でも耳管機能検査は正常パターンを示さないこともあるため, 耳管の状態を把握するためには自覚症状, 理学的所見, 複数の耳管機能検査の結果を総合して判断していくことが必要と考えた。

  • 阿久津 誠, 金谷 洋明, 柏木 隆志, 常見 泰弘, 宮下 恵祐, 青木 聡, 田中 康広, 平林 秀樹, 春名 眞一
    原稿種別: 臨床
    2019 年62 巻3 号 p. 121-127
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

     鼻中隔を基部とした多形腺腫の症例を経験した。 症例は67歳男性。 右鼻閉, 水様性鼻漏を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し, 右鼻内の腫瘤性病変を指摘され, 精査・加療目的に当科を紹介受診した。 CT 検査で鼻腔後方の鼻中隔を基部とした, 鼻腔内に限局する腫瘤性病変を認めた。 内視鏡下で摘出が可能と判断し, 内視鏡下鼻腔腫瘍摘出術を施行した。 腫瘍は鼻中隔軟骨・篩骨垂直板との癒着を伴わず剥離容易であり, 完全切除が可能であった。 病理組織学的検査で多形腺腫と診断され, 現在外来で経過観察中である。

     多形腺腫は上皮性腫瘍の一種であり, 良性腫瘍として知られている。 耳鼻咽喉科領域においては耳下腺・顎下腺など大唾液腺に好発するが, 低頻度ながら鼻腔・口蓋などの小唾液腺にも発生する。 良性腫瘍だが, 稀ながら悪性腫瘍に転化することがある。 そのため摘出に際しては腫瘤を一塊に摘出する必要があり, また術後も慎重な経過観察が必要である。

  • 髙橋 恵里沙, 大村 和弘, 森 恵莉, 鴻 信義, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2019 年62 巻3 号 p. 128-133
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

     鼻中隔嚢胞は現在までに文献で報告されている13症例の報告のみと非常に稀な疾患であり, 治療方法は確立されていない。

     今回われわれは経鼻内視鏡下で全摘出術を施行できた鼻中隔嚢胞の1例を経験した。 症例は39歳男性。 7ヵ月前から鼻の疼痛を認め,前医を受診した。 右鼻中隔粘膜に腫瘤性病変を認め, CT 上骨融解も疑われたため, 当院を紹介受診した。 当院での診察および CT, MRI の画像所見から鼻中隔嚢胞の診断となり, 疼痛出現時に穿刺排膿を行い経過観察としていた。 しかし, その後も嚢胞の腫脹および感染に伴う強い疼痛を繰り返したため, 根治的治療の目的で手術の方針となった。

     鼻副鼻腔嚢胞は術後性上顎嚢胞に代表されるように, 過去に施行した外科手術後に発生することが多い。 嚢胞の病態からの手術アプローチとしては, 開窓術と全摘術があり, 主には開窓術が適応となることが多い。 鼻中隔嚢胞に対しての治療も同様に開窓術を行っている症例が多いが, 術後に多形腺腫や結核, 動脈瘤様骨嚢胞の診断となった症例が存在する。 このことから, 嚢胞の穿刺細胞診にて, 嚢胞上皮を認めない症例, または鼻中隔手術の既往がない症例では鼻中隔嚢胞以外の疾患が背景にあることを考慮し, 全摘術が推奨される。 一方で, 嚢胞による圧迫,浸潤のため, 鼻中隔軟骨や下顎骨が消失しており, 術前に鞍鼻や顔面の変形を伴う場合は, 術後の整容面を考慮し, 外切開を併用し顔面の再建をする必要がある。 術前に顔面変形を伴わない場合は, 術中操作の配慮のみで対応している。

     本症例では, 術中の視野およびワーキングスペースを確保し, L-strut の強度を損なうことなく嚢胞の全摘出術を施行することが可能であったので報告する。

境界領域
  • 松尾 光馬
    2019 年62 巻3 号 p. 134-143
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2020/06/15
    ジャーナル フリー

     ヒトヘルペスウイルス α ヘルペス亜科に分類される単純ヘルペスウイルス1型 (herpes simplex virus type 1: HSV-1), 2型 (HSV-2), 水痘・帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus: VZV) 感染症は皮膚科, 耳鼻咽喉科での日常診療においてしばしば遭遇する。 その臨床型はさまざまであり, HSV 感染か, VZV 感染かで迷うこともしばしばみられる。 HSV と VZV 感染症では抗ウイルス薬の投与量は異なり, また, 皮疹の重症度, 腎障害の程度などによって投与量, 投与方法の調整が必要となる。 本稿では同ウイルスによる臨床症状, 診断法, 帯状疱疹に関しては合併症, ワクチンによる予防についても述べてみたい。

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