耳鼻咽喉科展望
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臨床
自家静脈パッチを用いて両側内頸静脈結紮を回避した1例
長岡 真人鄭 雅誠森野 常太郎小島 博己
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2019 年 62 巻 6 号 p. 273-279

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抄録

 両側内頸静脈結紮は頭蓋内圧亢進症状を来たし, 時に死亡に至る危険な手技として認識されている。 そのため, 両側内頸静脈結紮が必要となるような症例は原則として手術非適応とされている。 今回われわれは, 原発不明癌の頸部リンパ節転移に対して片側根治的頸部郭清術後に反対側の頸部リンパ節転移を来たした症例を経験した。 反対側の頸部リンパ節転移病変は画像検査上内頸静脈に一部浸潤していることが予測された。 そのため, 事前に大伏在静脈を用いた内頸静脈再建術を計画し, 内頸静脈欠損部位に対して大伏在静脈のパッチ形成を施行した。 内頸静脈の遮断時間は45分間であった。 手術中に重篤な合併症を起こすことなく, 安全に頸部郭清術を施行することができた。 また手術後温存した内頸静脈の灌流も良好であった。 両側内頸静脈の結紮を回避し頭蓋内圧亢進等による重篤な合併症を予防する方法として, 大伏在静脈による内頸静脈のパッチ再建法は安全かつ簡便に実施できる静脈再建法として有用である。

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