耳鼻咽喉科展望
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臨床
鼻中隔内磁性体異物の1例
白木 雄一郎嶋村 洋介中島 隆博野坂 瞳水成 陽介杉本 直基池田 このみ小森 学
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2020 年 63 巻 3 号 p. 114-118

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抄録

 鼻腔内異物は日常診療においてしばしば遭遇する疾患の一つであり, 6歳以下の小児が, 好奇心やいたずらにより挿入することが多いとされる。 金属などの無機性異物は異物感染が生じにくいため, 長期留置されたままとなりやすい。 複数個の磁性体異物の場合, 磁力に伴い特徴的な現象を生じることがある。

 症例は7歳男児で顔面外傷にて偶発的に頭部 CT を施行した際に両側鼻腔内異物を指摘された。 右側鼻腔内異物は目視可能であり, 直ちに摘出可能であったが, 左側鼻腔内異物は鼻中隔粘膜下に存在しており, 摘出困難であったため全身麻酔下での経鼻内視鏡下摘出術を施行した。 2つの鼻中隔内の磁性体異物は感染兆候もなく, 少なくとも数ヵ月以上の間, 鼻中隔を圧迫しており, 異物周囲の軟骨は一部欠損を認めていた。

 鼻腔内異物はよく遭遇する疾患であるが, 複数の磁性体異物の場合, 長期に留置されていることがあり, 組織の一部欠損を生じる場合がある。 そのため鼻中隔穿孔のリスクを避けるためにも切開部位を考えて手術を施行することが大切であると考えられた。

 今回, 偶発的に発見された鼻中隔粘膜下の磁性体異物の1例を経験したので報告する。

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