耳鼻咽喉科展望
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難聴・めまいと認知症
内田 育恵
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2020 年 63 巻 3 号 p. 123-127

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抄録

 認知症, 中でも最多のアルツハイマー病について根治的治療法は確立されておらず, 認知症発症を遅らせたり, 進行を緩やかにする対処法が望まれている。

 本稿では, 難聴が認知症の危険因子として注目されることとなった Lancet 国際委員会の報告や, 世界の大規模疫学研究から難聴と認知症の有意な関連を示すエビデンスを紹介し, 補聴器や人工内耳などの聴覚補償の認知機能への効果に関して概説した。 後半では, 前庭機能障害と認知機能, 特に空間認知能力の低下と関連があるとする疫学研究を提示し, 認知症病型や治療薬剤によるめまい症状に関しても取り上げた。 今後は聴覚, 前庭機能低下への対策による, 認知機能低下, うつ, 社会的孤立, 日常生活動作の低下などの不利益連鎖の軽減が課題である。

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