2020 年 63 巻 6 号 p. 294-301
メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患は, 関節リウマチ治療の第一選択薬である Methotrexate により惹起されるリンパ増殖性疾患である。 29%で再発を認めることが報告されており, 通常は2~3年以内で再発することが知られている。 今回, 初発から5年を経て再発したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例を経験したのでここに報告する。
症例は54歳男性。 関節リウマチに対し Methotrexate で治療中であった。 頭痛, 左上口唇・左顔面のしびれを訴え, 前医耳鼻咽喉科を受診し, 当科へ紹介となった。 CT にて骨破壊像は認められないが, 左上顎洞陰影を認めた。 副鼻腔悪性疾患も疑い, 生検および治療目的に内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。 病変部粘膜の病理組織検査で, びまん性大細胞性 B 細胞リンパ腫の結果であり, 可溶性インターロイキン2受容体の高値と Methotrexate 内服歴により, メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の診断となった。 Methotrexate を中止し, 1ヵ月で寛解を認めたため, 以降, 休薬して経過観察した。
初診時から5年後, 採血にて可溶性インターロイキン2受容体の再上昇を認めた。 左下鼻甲介の腫脹が著明であり, 生検でびまん性大細胞性B細胞リンパ腫の病理組織診断となり, メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の再発と診断された。 R-CHOP (Rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisone) 療法6コースを施行し, 治療後に寛解を認めた。 以降, 1年経過した時点で再発の兆候はない。
Methotrexate 使用歴のある患者が局所増殖性疾患を呈した際には, 本疾患を考慮しなければならない。 寛解後は再発に注意して十分な期間の経過観察を要する。