耳鼻咽喉科展望
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臨床
蝶形骨洞嚢胞との鑑別が困難であった経蝶形骨洞型髄膜瘤症例
大塚 康司矢富 正徳岡吉 洋平武田 淳雄服部 和裕丸山 諒塚原 清彰
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2021 年 64 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

 今回われわれは, 蝶形骨洞嚢胞との鑑別が困難であった経蝶形骨洞型髄膜瘤症例を経験したので報告する。 症例は22歳, 男性。 繰り返す激しい頭痛のため近医から紹介となった。 脳 MRI にて蝶形骨洞を占拠する T1 で低信号, T2 で高信号の病変を認め液体の貯留が示唆された。 鼻手術および頭部外傷の既往はなく, 自然口閉鎖による原発性蝶形骨洞嚢胞と考え, 外来にて投薬による消炎加療を行ったが, 症状は改善せず, 患者は根治手術を希望した。 嚢胞の圧迫による頭痛を考えて, 入院の上, 全身麻酔下に ESS による開放術を施行したところ髄液漏が生じ, 経蝶形骨洞型髄膜瘤と診断した。 蝶形骨洞外側壁から拍動性に髄液が漏出していたが, 同部を直接閉鎖する処置が困難なため, 髄液漏の閉鎖は蝶形骨洞内 (すなわち髄膜瘤内) に脂肪を充填し, 蝶形骨洞自体を閉鎖した。 術後3年が経過しているが髄液の再漏出は起きておらず, 頭痛も改善した。 鑑別が困難であった要因としては, 症状は頭痛のみであり, その他に中枢性疾患を疑わせる症状はなかったためであった。 頭痛は占拠性病変による頭蓋内圧の上昇によるものと推測され, 嚢胞でも起こりうる。 しかし, 入念な画像の読影をしていれば, 髄膜瘤と診断して脳神経外科と合同の手術プランが立てられたと考えられた。

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