耳鼻咽喉科展望
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臨床
外耳道皮下気腫の1例
源馬 亜希山本 裕井上 大介竹下 直宏近藤 農三浦 正寛千葉 伸太郎太田 史一小島 博己
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2021 年 64 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

 頭頸部領域の皮下気腫は日常診療で経験するが, 外耳道に限局した皮下気腫の報告は稀である。 今回われわれは外耳道皮下気腫の1例を経験した。 症例は15歳男児で, くしゃみ・鼻かみを契機に左耳閉感と耳痛を自覚した。 前医の左外耳道腫脹に対する内服加療により一時改善したが, 再発したため当科を紹介されて受診した。 受診時, 左外耳道は腫脹により高度に狭窄し, CT 検査で左外耳道腫脹部の皮下に気体の貯留を認め, 外耳道皮下気腫と診断した。

 発生機序は, くしゃみ・鼻かみにより耳管経由で中耳腔に圧負荷が生じ, 乳突蜂巣経由で外耳道骨壁へ圧がかかり, 外耳道骨壁の欠損部や菲薄部に皮下気腫を形成したと推察された。 そして, 小児は中耳腔の圧負荷を解除する能動的耳管換気能が未熟という小児の耳管機能の特徴や, 本症例は発育抑制側の乳突蜂巣でありながら外耳道骨壁に骨欠損と菲薄化が生じているという解剖学的特殊性の関与が考えられた。

 治療は, 初期は経過観察, 抗菌薬加療, 気腫部の穿刺吸引・圧迫固定を行い, 内服加療や生活指導で予防に努める。 再発する際は, 皮下気腫部の切開・開創, 鼓膜換気チューブ留置, 外耳道骨壁の硬性再建手術などの選択肢も考えられる。

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