2021 年 64 巻 3 号 p. 145-149
新型コロナウイルス感染症 (Coronavirus disease 2019: COVID-19) の確定診断には逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (Reverse transcription polymerase chain reaction: RT-PCR) 検査が必要であり, 特に上気道検体である鼻咽頭スワブを用いて行うことが一般的である。 しかし, 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応が陰性であったとしても新型コロナウイルス感染症は否定できない。 今回気管切開術後に新型コロナウイルス感染症を発症した1例を経験した。 発熱, 呼吸不全を来し新型コロナウイルス感染症を疑ったが上気道検体による逆転写ポリメラーゼ連鎖反応は2回連続で陰性であった。 しかしその後喀痰を用いて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を施行し新型コロナウイルス (Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2: SARS-CoV-2) 陽性を確認した。 臨床的に新型コロナウイルス感染を疑う場合は繰り返し逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行う必要があり, また気管切開前後の感染であるならば初回から下気道検体を用いるべきである。