2021 年 64 巻 3 号 p. 150-156
内反性乳頭腫は鼻副鼻腔領域の良性腫瘍の中で最も多く, 通常は片側に発生すると認識されている。 今回われわれは, 術中迅速診断にて診断し得た両側に発生した鼻副鼻腔内反性乳頭腫 (inverted papilloma: IP) の2症例を経験した。 1症例目は62歳, 男性。 鼻閉を主訴に来院し, 両側鼻腔とも前鼻孔付近まで進展する腫瘍を認めた。 2症例目は46歳, 男性。 鼻閉を主訴に来院し, 右側鼻腔に前鼻孔付近まで腫瘍の進展を認め, 左側中鼻道には炎症性ポリープを疑う所見を認めた。 いずれも術前の組織学的診断は炎症性鼻腔ポリープの診断であったが, MRI にて脳回様構造を認め, 手術中の迅速組織診断にて両側鼻腔より鼻副鼻腔内反性乳頭腫の診断を得た。 片側の鼻副鼻腔内反性乳頭腫と診断された場合でも, 対側に腫瘍性病変を合併している可能性がある。 そのため, 画像検査で特徴的な所見を認めない場合でも鼻内の詳細な観察が重要であり, 場合によって術前の組織学的診断や術中迅速診断を積極的に施行すべきである。