耳鼻咽喉科展望
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臨床
塩素系洗浄剤が原因と考えられた嗅覚障害の2症例
田中 大貴森 恵莉関根 瑠美鄭 雅誠鴻 信義小島 博己
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2021 年 64 巻 3 号 p. 157-162

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抄録

 本邦では家庭用洗剤として次亜塩素酸塩がよく用いられ, 複数の会社で製品化されている。 使用の際には酸性洗浄液との併用禁忌や換気, マスクや手袋・ゴーグル等の着用の推奨などの使用上の注意が記載されている。 しかし, 防護や換気をしたのにも関わらず健康被害を呈することもあり, その一つに嗅覚障害を呈したというソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 上の書き込みが散見されるが, それを詳細に報告した論文はない。

 今回, 塩素系洗浄剤の使用後に嗅覚障害を呈した2例を経験した。 次亜塩素酸や代謝産物である有機塩素化合物が嗅裂炎を起こし, 気導性嗅覚障害を呈する可能性や, 繰り返す次亜塩素酸の曝露が嗅上皮の再生能・恒常性の障害や炎症細胞浸潤による神経障害を引き起こして神経性嗅覚障害を呈する可能性がある。 塩素系洗浄剤を使用する際には, 使用上の注意を遵守すること, また嗅覚障害出現時には同洗浄剤の使用を直ちに中止し, 専門の医療機関を受診することが重要と考えた。

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