耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
上眼瞼に皮下膿瘍を形成し皮膚に自壊した前頭洞嚢胞の1例
加藤 照幸
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 64 巻 6 号 p. 339-346

詳細
抄録

 今回われわれは, 前頭洞嚢胞に繰り返し感染が生じた結果, 上眼瞼に膿瘍を形成し自壊した1例を報告する。 症例は51歳, 男性。 主訴は右上眼瞼腫脹と圧痛であった。 繰り返す上眼瞼の腫脹と圧痛のため当院形成外科に紹介となった。 形成外科で撮影したCTで右前頭洞嚢胞を認め当科紹介となった。 当科初診時に, 右上眼瞼に圧痛のある皮下膿瘍と右開眼制限を認めた。 その後, 上眼瞼の皮下膿瘍は自壊し排膿が続いた。 精査の結果, 右前頭洞嚢胞感染による上眼瞼皮下膿瘍, 膿瘍自壊と診断した。 形成外科, 脳神経外科と合同で手術を行い, まず当科で内視鏡下鼻・副鼻腔手術にて前頭洞嚢胞を開放し, 次いで形成外科, 脳神経外科が頭部冠状切開を行い開頭した後に, 前頭洞嚢胞切除と右眼窩上壁再建を行った。 前頭洞後壁が溶解していたため前頭洞を頭蓋化し, 頭蓋側に前頭筋骨膜弁を挿入し, 眼窩上壁に頭蓋骨内板から採取した骨を移植し, 鼻腔側に鼻中隔粘膜弁を挿入固定し終了した。 術後経過は良好で, 治療後6ヵ月経過するが感染の再燃はなく, また開眼可能となり美容的にも満足が得られている。 耳鼻咽喉科以外の他科とも連携協力して対処すべき疾患であると考えられた。

著者関連情報
© 2021 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top