耳鼻咽喉科展望
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64 巻, 6 号
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カラーアトラス
綜説
  • 都築 建三
    原稿種別: 総説
    2021 年 64 巻 6 号 p. 320-330
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     好酸球性副鼻腔炎 (eosinophilic chronic rhinosinusitis: ECRS) の病態は, 外界刺激に対する鼻副鼻腔粘膜の自然免疫と獲得免疫応答であり, 2型サイトカイン (IL-4, 5, 13) を主軸とする2型炎症である。 血管透過性亢進による浮腫 (アルブミン漏出) と凝固系亢進・線溶系抑制 (フィブリン網沈着) が, 鼻茸の成因と考えられる。 診断基準による好酸球性副鼻腔炎の確定診断例は, 厚生労働省指定難病に該当する。 好酸球性中耳炎, 気管支喘息, 全身オーバーラップ疾患の併存も考慮する。 好酸球性副鼻腔炎の治療は, 呼吸および嗅覚機能の改善・維持をゴールとする。 費用対効果を考慮して, 2型サイトカインを抑制する薬物 (副腎皮質ステロイド薬, 生物学的製剤など) と内視鏡下副鼻腔手術を適切に組み合わせて治療する。

臨床
  • 北村 佳奈, 宇田川 友克, 志村 英二, 櫻井 結華, 高橋 恵里沙, 伊藤 三郎, 沼田 尊功, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2021 年 64 巻 6 号 p. 331-338
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     聴覚障害では加齢性難聴を代表とする高周波数の聴力低下が占める割合が高いが, 高音域の難聴は会話ではあまり不自由を感じない。 したがって, 低音から中音域が正常聴力に近い高音障害型感音難聴の患者が耳鼻咽喉科を受診する主訴としては難聴ではなく, 難聴付随症状としての耳鳴が多い。 高音障害型感音難聴を引き起こす薬剤として, 多くの悪性腫瘍の治療に使用されている抗癌剤であるシスプラチンがよく知られている。 シスプラチンの累積投与量が 300 mg/m2 を超過すると感音難聴の発生頻度が高くなるとされているが, 比較的少量のシスプラチン投与によっても聴覚障害が発症することはある。

     今回われわれは, 肺癌術後に導入された補助化学療法中に, シスプラチンの累積投与量が 160 mg/m2 と比較的少量である段階で耳鳴が発症した症例を経験した。 純音聴力検査では高音障害型の感音難聴, また, 歪成分耳音響放射 distortion product otoacoustic emission (DPOAE) では高周波数の distortion product level の低下を呈しており, シスプラチン投与による蝸牛障害に付随した耳鳴と考えられた。 シスプラチンの累積投与量の増加とともに高音障害型感音難聴は進行した。 蝸牛障害を評価する歪成分耳音響放射の distortion product level と信号対雑音比 (sound noise 比) はともに低下し, また, 耳鳴の自覚症状を表す tinnitus handicap inventory (THI) スコアは悪化した。 シスプラチン投与症例の聴覚評価には純音聴力検査だけではなく, 歪成分耳音響放射や tinnitus handicap inventory 等を含む種々の検査を複合的に施行することが有用であると考えられた。

  • 加藤 照幸
    原稿種別: 臨床
    2021 年 64 巻 6 号 p. 339-346
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     今回われわれは, 前頭洞嚢胞に繰り返し感染が生じた結果, 上眼瞼に膿瘍を形成し自壊した1例を報告する。 症例は51歳, 男性。 主訴は右上眼瞼腫脹と圧痛であった。 繰り返す上眼瞼の腫脹と圧痛のため当院形成外科に紹介となった。 形成外科で撮影したCTで右前頭洞嚢胞を認め当科紹介となった。 当科初診時に, 右上眼瞼に圧痛のある皮下膿瘍と右開眼制限を認めた。 その後, 上眼瞼の皮下膿瘍は自壊し排膿が続いた。 精査の結果, 右前頭洞嚢胞感染による上眼瞼皮下膿瘍, 膿瘍自壊と診断した。 形成外科, 脳神経外科と合同で手術を行い, まず当科で内視鏡下鼻・副鼻腔手術にて前頭洞嚢胞を開放し, 次いで形成外科, 脳神経外科が頭部冠状切開を行い開頭した後に, 前頭洞嚢胞切除と右眼窩上壁再建を行った。 前頭洞後壁が溶解していたため前頭洞を頭蓋化し, 頭蓋側に前頭筋骨膜弁を挿入し, 眼窩上壁に頭蓋骨内板から採取した骨を移植し, 鼻腔側に鼻中隔粘膜弁を挿入固定し終了した。 術後経過は良好で, 治療後6ヵ月経過するが感染の再燃はなく, また開眼可能となり美容的にも満足が得られている。 耳鼻咽喉科以外の他科とも連携協力して対処すべき疾患であると考えられた。

  • 櫻井 凜子, 水成 陽介, 池田 このみ, 小森 学, 志村 英二, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2021 年 64 巻 6 号 p. 347-354
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     脂肪肉腫は軟部肉腫の中では一般的であるが, 頭頸部領域での発生は少ない。 頭頸部腫瘍の中でも稀な後咽頭間隙に発生した腫瘍が脂肪肉腫の診断に至った1例を経験したため報告する。 症例は51歳, 女性で咽頭違和感の精査のため施行した画像検査から頸部脂肪腫が疑われた。 経過観察としていたが, 腫瘍の増大に伴い頸部腫脹や夜間の呼吸困難感が出現した。 確定診断および polysomnography 検査で認めた重症の睡眠時無呼吸症の治療目的に後咽頭間隙腫瘍摘出術を行った。 摘出標本は脂肪腫様の軟部腫瘍で深部に白色調の硬結部を認め, 病理組織学検査で高分化型脂肪肉腫の診断となった。 術後, 睡眠時無呼吸は改善し, 現在再発はなく良好な経過をたどっている。 画像での脂肪腫と脂肪肉腫の鑑別は困難であり, 特に頭頸部領域では解剖学的特徴から拡大切除に伴う侵襲が大きく治療法選択に難渋することがある。 今回の症例のように腫瘍の増大傾向や夜間無呼吸などの症状の増悪を認める場合は手術を検討するのが望ましく, 経過観察する場合も十分な注意が必要と考える。

  • 松下 豊, 清水 雄太
    原稿種別: 臨床
    2021 年 64 巻 6 号 p. 355-359
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     側頸部嚢胞性疾患の鑑別診断は多岐にわたり, それらを念頭に置いた診察・検査を行うことが必要である。 今回われわれは, 側頸嚢胞と考えて摘出術を行った結果, 副甲状腺嚢胞と診断された症例を経験した。 側頸部嚢胞性疾患の中には癌のリンパ節転移や症状を呈する機能性副甲状腺嚢胞など, 早期の診断と治療介入が求められるものも存在する。 適切な鑑別疾患の列挙と診断に必要な検査を行うことが重要であるが, 検査を行っても診断が困難な場合は, 安易に経過観察とするのではなく, 摘出による病理組織検査を優先すべきである。

境界領域
  • 廣瀬 勝己, 佐藤 まり子, 原田 麻由美, 髙井 良尋
    2021 年 64 巻 6 号 p. 360-367
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

     2020年6月より, ホウ素製剤ボロファラン (10B) およびホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) 治療システムを用いた局所再発・局所進行頭頸部癌に対する中性子捕捉療法の保険診療が開始された。 本治療はホウ素と中性子の核変換反応を利用した治療法であり, ホウ素薬剤の集積に応じて腫瘍への選択的な治療が可能となる。局所再発の扁平上皮癌に対する初期治療効果は完全奏効率で5割前後と, その有効性は高いことが報告されている。 ただし照射に用いられる中性子は深部へ届きにくく, 体表から深部への腫瘍進展がある患者では有効な治療が困難になる。 したがって本治療は, 局所再発をきたした患者で, かつ深部への進展がないうちに実施が検討されることが望ましい。

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